私と梅酒と夏の思い出 Mad Accelerator          

私と梅酒と夏の思い出

今後、便宜的に仮の名で「濱子」と呼ぶことにしよう。

享年三十六歳。彼女は、私が世界で一番愛した女性だ。


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我々は、ボロいアパートで同棲生活を送っていた。いや、本当にボロいアパートだった。

濱子は私の身の回りの世話を全てやってのけた。それはもう、完璧に。
作る飯は美味く、少し下世話な話になってしまうが……セックスも完璧だった。

「性格」以外は申し分なし……いや、これでは語弊があるな……許せ。


ある夏の日、濱子は「梅酒を作ってみたい!」と言いだした。私は梅酒を作ったことがないのだが、レシピに沿ってチャレンジしてみた。

美味いかどうかは、お楽しみ。梅を漬け、じっくり待つこととなった。


それから一ヶ月ほどだろうか……濱子が落ち着かない。梅酒が気になるようだ。

「ねえ。梅酒、まだ?」と濱子。

私は言った。「うん。まだだろうね……とにかく待ちなさい」

私は梅酒を「一ヶ月くらいじゃ飲み物にならない」と考えていた。
我慢して、我慢して……「時間をかければ、きっと美味い梅酒ができるはずだ」


待てと言うのに、濱子はどうしても待ちきれず、梅酒を飲んでしまった。

「ちょっと味見する」などと言いながら、濱子が梅酒を口に……すると、
「うげぇっ!? 不味い!!」
と、盛大にえずいてしまった。八名信夫ですか。おかわりはやめとけ。

私は「ほら、言わんこっちゃない」と呆れてしまった。とは言え、少し考えてしまった。

……レシピ通り、作ったよな……


それから数ヶ月した後、濱子は急速に様態を悪化させ、入院した。

彼女は結局、梅酒を残したまま冥府へ旅立ってしまった。


アパートを引き払い、私はボロボロの状態で実家へ戻った。梅酒も勿論、持ち帰った。
一年間、引きこもり状態だったので、社会復帰は困難と思われたが……現在に至る。


ある日のこと。突然と、私の母親が大声で絶賛した。
「お前が持ち帰った梅酒、物凄く美味しいの!! 本当に美味しい!!」


ふん、当たり前だ。濱子のために作った梅酒なのだ。不味いわけがなかろう。

そう。我々の間には不味い物など、何一つなかったのだ。何一つ……ね。





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(;ω;)

こんにちは。何故、濱子さんが梅酒を飲みたがったのか、解りませんが。

きっと残り時間が少ないことを無意識のうちに悟ったのでしょうか?

今となっては解らない話ですが、いい話です。
どこぞの24時間テレビよりいいです。

CM

こういう思い出があると、梅酒のCMを見ると、その都度、思い出してしまいますね。
うめーッシュ!なんて、あまり、陽気な気分には、なれないでしょうが。

Re: (;ω;)

毎度どうも!

彼女との思い出は健やかで御座います。
これからも語っていきたいと思います☆

Re: CM

陽気な気分にはなりませんが、度々思い出しますね。

忘れてはいけないので、これからも語っていきます。

私は、忘れてはいけないので。決して!
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